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第25話 誰の物語か

Auteur: あおはな
last update Date de publication: 2026-05-23 15:00:16

 夜会の喧騒から逃れるように、俺は私室の扉を閉めた。

 背後で響く重たい音に心の奥に張り詰めていた糸がひとつ緩むような錯覚を覚える。

「はぁ……終わった」

 そう呟いた瞬間、純白のドレスが、まるで重い枷のように床へ滑り落ちる。

 布の擦れる音が、静寂の中でやけに大きく響き、それは【聖女候補・アリス】という仮面を、一時的に脱ぎ捨てた音だった。

 ドレスから解放された身体には、まだ微かな熱が残っている。けれど、心はひどく冷え切っていた。

 あの場に立つことなど、もはや造作もない。

 男たちを魅了し、偽りの微笑を浮かべ、祝福の女神を完璧に演じる。それはもう、呼吸のように自然で当たり前になっていた。

 ――だが、その裏で、どれだけ心が削られていたかなんて誰も知らない。

 鏡台の前に腰を下ろす。蝋燭の火が静かに揺れ、その光の中に自分の顔が浮かぶ。

 それは――【リリス】の顔だった。

 白く透き通った肌。緩やかに巻かれた長い銀髪。<

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